人材育成の本質 (Real Growth of Human Being)  7月第2週号-2

2014年7月第2週号-2 (#20)   経営

人材育成をしている人は、まず自分が育成された経験があって初めて人材育成の基本が判ります。育成された経験のない人が他の人を育成するのは非常に難しいことです。

これに似たことが社長の後継者育成にも当てはまります。この場合はもっと深刻で余裕がない場合が多いのです。

一般的に社員・幹部の人材開発は3~5年かけてプログラムに乗せればある程度できます。また、本人が意識しなくても会社としてのレールに乗せることができます。
しかし社長の後任となるとその目的から、本人が知らないうちに後継者育成ロードマップに乗せるわけにはいきません。時期社長の候補が社内に何人いようとも、あるいは外部から迎えることにしても、公には出来ませんが、候補者にはそのことを知らされなければなりません。

既にその才能がある、または過去の経歴から見てその器がある人を採用するのならばまだしも、未だ社長経験ない人の育成は社長自らがするのが一般的には正しいことです。育成する側の社長に問題がない場合はこの方法が一番です。

問題は次期後継者、自分の後継者、あるいは支社、M/A のトップ(社長)の育成です。
海外に進出しているある会社では、社長は人事と一緒に、一般の幹部から何名もの候補を見つけるべく3年にわたる特別セミナーの実施を望んでいたのですが、社長が留守の間に行われた研修は社長の考えているTransformation変容 とは似ても似つかない職制研修になっていました。
これはTransformation 変容を知らない副社長、工場長、人事部長が自分たちが理解できる範囲のものにその内容を変更したために、結局従来の研修の延長上のものにしてしまったためです。

変容とはタイトル(肩書)が変わることではなく、給料をもらう側から支払う側になることです。今までコツコツと一生懸命に努力をして上に上がってきた人たちとは違うのです。 特にIT系、金融系に多く見られます。また過去の実績と滞在期間から観た製造系にも多く見られます。
どうしてか、それは、今まで人から言われてやってきた仕事から、自分で全て責任を取って部下にエンパワーする側になることです。
今迄は景気の上昇に伴って一緒に坂道を昇ったから上司になっただけであり、本質的な経営である組織の発展、企業の継続的な社会貢献とは離れてビジネスモデルの渦中にいただけだからです。

ある会社では、社長の後継者選びの方法に、役員同席の上で研修内容を査定し、その内容が一番良いとの結論に達したにもかかわらず、全く内容がわかっていない役員と担当者が自分の手柄にしたいために、当初のTransformationを変更してしまうということもありました。
特にグローバルで考える場合は、文化とレベルの違いで問題が生じます。現地の会社は自分たちの力を発揮できる限られたチャンスを生かすために、愚策を行ってしまうということもあります。日本の人事はそこまで自分の為だけに個人的な利益のための仕事をしていません。
それほどまでにTransformation, 人材育成というのは幅が広く、そして難しいものです。
このtransformation, 人材育成は一般の研修会社では99%出来ないでしょう。
論理的に簡単だと思ったとたんに間違いになっています。
人に頼むのではなく、自分の会社で、それも社長自ら行うものです。
あるいは社長経験者がTransformationとは何かが本当に判っているコーチと一体となって2~3年かけて後継者を育成するものです。

一般の幹部人材育成でも、Behavior, 思考の変容、その他多くの課題の選択、決断を変容させることはできます。
しかしこのような会社にとって重要なことをコンサルタントや研修会社に任せている会社が多くあるのでこれらは絶対に避けるべきです。会社の中には既にきちんとした人材があるにもかかわらずにコンサルタント(一般的な過去の例に則って)に頼むのです。

ではあなたの会社はどのようにして人材を育成をしますか。

社長レベルですか、役員レベルですか、それとも一般幹部のキャリアとしてですか?

先ずは自分が人材育成をされた経験が有るかどうかから始まります。
このようなことを知らずに、人材開発エージェント・コンサルタント(調査して何かを提供する)や研修会社などに依頼して研修をしている会社が多いのです。
しかしその内容はあくまでも知識的なことと論理的な能力の開発ばかりを教えているのが現状です。 理性と感情には踏み込めません。

「学習とは何か」を理解することです。
会社・本人に何が必要か、そのために何をするのか、それを阻害しているものは何か、
邪魔になるものは何かを見つけ、それらを自分で取り除く勇気を与えるようにします。

それから本格的な学習になるのです。
これら全体をコーチしてもらいながら人材を育成していくことが本質です。
(これらは簡単にお話しているのでご理解しやすいと思います。しかし簡単に理解できることは簡単に忘れてしまうということもお忘れなく。)

A社の会長は会社の立て直し、継続的な成長は全て自分が成し遂げたといいます。全て自分が決断して問題は自分が解決して赤字の会社を黒字化したと。社員は何もしなかった、相談相手も居なかったという自慢話をされています(HR Conference)。
経営者の講演での話の多くが本に書いてあるものをコピー、ペーストしていることは、ある程度勉強している社員や外部の人たちにはわかることです。後継者を育てていなかっただけです。

オレは銀行から来て会社を立て直した話。 
これらの本、内容には具体的なノウハウや社員の教育方法は何も書いていません。
出版社のシナリオライターが社長の為に書いてくれた社長の自慢本です。(もちろん全部ではありません)。本来ならば周りの環境、幹部社員の努力もあったはずです。

人事部、人材開発部、会社の人材育成は時と共に変化しています。
今求められているのは研修会社ではなく、本当に人材(タレント)を育成してくれる人、組織です。あるいは育成してくれるメンターの場合もあります。
ではどんな人にコーチになってもらえばよいのでしょうか。

部分最適、知識集約的なコンサルタント・コーチは既にすたれています。効果がないことを多くの人は知っています。

MBAは一般の人のデファクト。 経営学校の知識は必要であっても、本質な目的のためのゴールとはなりえないことをご理解ください。今の大学ではすでにMBAと同じ内容を1~3年までに教えています。
多くのエンタープライズの人事はよくわかっている話です。

ではまたの機会に本格的な内容を検討しましょう。

杉井要一郎


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