ドイツ大使公邸の話、真夏の夜のお話(おもてなし、おもいやり) 8月第5週号

2014年8月第5週号(#27) Big Surprise


お客様に対する思いやりの心は誰にでもあります。
相手が心配していること、困っていること等を相手の立場になって自分のことのようにふるまう事。口にしなくても相手が気づかなくてもそれでよいのです。

自分が心から思いやれることでよいのです。相手のためではなく自分のためだと思えばよいのです。
これが本当の思いやりですね。

真夏の夜のご招待、ワインも食事もおいしくいただいた後、1000坪くらいの公邸の庭を夕涼みがてら散策した時のことです。団扇を持っていろいろな茶室を見、芝生の上を歩き、戻ってきて気が付いたことは、8人の人が誰も蚊に刺されていないのです。

我が家で庭に出て夕涼みをしようものなら、足の先から顔までやぶ蚊に襲われて大変な目にあいます。
後でお聴きして驚いたのですが、この日のために3日前からやぶ蚊退治をしてくださったとのことです。
これが本当の思いやりですね。

手を差し出す勇気がある人は何も求めてはいません。
人に認められなくてもやらずにはいられない気持ちです。
さりげない残り香。
やさしい心を人知れず持つ。そのしぐさ、想いが良い香りを残すのです。
そんな毎日を自然と過ごすことが出来れば、朝起きて今日はどんな幸せが来るのだろう、とその日その日を心待ちするようになりますね。

私は1995年からオランダのヒルベルサムという町に住んでいました。その時はオランダのERP会社Baan社に勤めていて日本から本社に行っていました。
社長のJan Baanはプロテスタントのカルベニストです。何時も会社で会えるわけではないのですが、会うたびにAre you enjoying your lifeare you happy? と誰にも聴くのです。
彼はどんな苦しい時でも、日本との交渉、大手企業からのグローバルな要求に徹夜で対応しているときでも、絶対にイライラしたり、怒鳴ったり、怒りを顔に表すことなく、相手に対して一緒に働いている人たちが常に幸せであることを問い続けてくれていました。
今になってやっとわかったのですが、彼は本当に皆が幸せになることを心から望んでいたのです。そのために我々自身が幸せであることを感じ取るチャンスを与えてくれていたのだと思います。これもおもてなしですね。後になってやっと質問の意味が理解できたのです。

心の広い人には頭が下がります。
何を言うでもなく、驚きは隠さず、喜びはともに分かち合い、何が在っても動ぜず、忍耐をしているのを見せるわけでもないのです。

人にはいつも温厚で話を聴いてくれる。
大きな包容力で、小さなこと、自分のことは自分で解決するようにさせる。
気持ちの問題があってもいつも肯定的にとらえるようなマインドセットが出来ている。
特別なことではなく日頃からの習慣でやっている。

「武士は食わねど高楊枝」なんていうフレーズが有りますね。
客人に対する武士道とも解釈できます。
これ見よがしに相手が気に入るように、目に見えるようなことをしておもてなしだと思っている人を多く見かけます。
これは思いやりのないおもてなしです

お金ではなく相手に気づきを与えない、自分が出来る最高の思いです。この思いやりを持ってするおもてなしが本ものです。

さてあなたは来週お客様をお迎えします。
どのようなおもてなしをしますか。
友達の家にお誘いを受けました、その時にはどのようなことを思って訪問しますか。 

杉井要一郎

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