エグゼクティブコーチングが本当に必要か? (Transformational coaching) 10月第4週号

2014年10月第4週号(#35)
Executive coachが Executiveのコーチングをする際に、クライアントからクライアント自身も知らないことを気づかせて導き出すということをしますが、これは直観でも思いつきでもありません。
ではどこからアイデア、Ahaを出すことが出来るのでしょう。

私どもはここ10年間、エグゼクティブコーチングが本当に必要かを探求してきました。

特にエグゼクティブコーチングが日本にまだ導入されていない頃から経営者を対象にコーチングをしてきましたので、単なる気づきは戦術でしかないことがわかっていました。

特に質問による気づきは、どの場合も基本的なことですが、それだけでは全く用をなさない、一般のコーチングの域を出ないということがわかりました。

もしそれが短期的なゴールならばそれはそれでよいでしょう。 しかしトップエグゼクティブ達は常に難しい課題を設定し、挑戦的で、未来のビジネスモデルの為には戦略さえも容易に変える人達です。競合他社が新しい商品を開発した時の戦術とは違う、時代を先取りするようなシナリオ創造性は長期的な投資も必要です。そのための特別なノウハウがあるはずです。

直観はご存知のように自分の知識、又は何らかの過去のデータの深い蓄積と新しい情報との融合により出来たものであり、自分の中で完結して出てくるものです。

これには3つの方法があります。
最初に、これは思いつきと同じで、浅い潜在意識からの抽出です。
これらを取り出すためにコーチは顕在意識と潜在意識の間にある障壁、バリア、フィルターを通して、新しいアイデア・直観等の関係性を取り出すようにしています。

この情報だけでは新しい新規案件、新しいひらめき、不断にできるようなものは出来てきません。

二番目は、コーチ、コンサルタント、自分も含め、誰も知らないようなアイデアを引き出してくれる会話・コミュニケーション、質問による新しい思考法で、これまでにないような内容でできることが必要です。

私どもがいつも追及していることは、コーチはその答えを知らない、それどころか質問の方法さえ知らないようなドメインのコミュニケーションで、相手にとって困惑するような内容の話です。
相手も自分の知らないことを質問されることにより、一生懸命考えて、お互いが思考をぶつけあうことにより、直ぐにではないが一定期間たった時に、その時の会話を解決する何かのきっかけ、突飛もない連鎖・アナロジー思考(Analogy)が出てきます。
これが私たちが求めていたPower Question です。
これらに対しては色々なアドヴァイスや、本を読むことにより、大きな気づきが生まれることが非常に多くあります。

そして第三番目には、課題提供をチームやその課題に興味が有る人達が、いろいろと幅広く話の範囲を広げていった時に、その話題同士がシナプスのぶつかり合いにより、全く新しい課題を提供してくれるのです。
この課題を解決しようとすると脳の中で思考が始まり、最初は抽象的な内容から始まった思考が具体的に落ちるようになるのです。
このような状態を藤井直敬教授は社会脳と呼んでいます
新しい課題とその解決策のヒラメキを両方ともに時間をかけて創出するのです。

この3つの状態をコーチが明確に理解してプロセス化することにより、多くの人が今までにない課題の創出をさせる事ができるのです。

コーチはチームの場合には恣意的arbitrary にチームディスカッションの際にコンフリクトが起こるよう仕向ける場合があります。
馴れ合いになる、安全パイに陥って冒険をしなくなる、相手を非難しない環境を作り上げてしまったこのようなチームには新しい冒険どころか気づきも出なくなっている場合がおうおうにしてあるからです。

また誰か特に出来る人がいたりすると,皆その人に頼ったり、任せっきりになってしまって思考が停止しているのです。自分で考えないからです。
そこでコーチの出番です。
勿論コーチ自身ではなく、リーダーがそれを出来る様になるのが一番です。
コーチはこのようなことが出来るという自信を持ってコーチングにあたっているのです。そのように特別な訓練を受けているからです。
特筆することは、コーチは何も特別な知識とかノウハウを持っている必要はないのです。単にどのようにクライアントを新しい思考に導くか、そのクライアントの性格、コーチに対する信頼性を獲得する事が一番重要かつ必要なのです。
コーチの自信と信頼性があって初めて今まで話したようなことをクライアントから導きだすことが出来るのです。
そのためにはもちろんコーチ自身の器が大きくなくてはなりません。
またエグゼクティブに対して何がしかの器量と技量と度量がなければ同じ土俵で話すことは出来ないのです。
相手の会社、プロと同じ内容のビジネスに精通する必要もなければそのための勉強をする必要もありません。それはコンサルタントの仕事です。
コンサルタントは創造性を働かして無から何かを作り上げることはしません。
自分の持っているコアコンピタンスを提供するのです。

コーチは本当に大変です。自分の知っていることならばコンサルになればよいのです。しかしコーチです。知っていることなんぞにかまっていられないのです。それが時代の要求ですし、本物のGenuineコーチングだからです。
          
常に最先端の思考を持ってクライアントにあたるのがコーチの勉強です。
ではコーチは何を勉強すればよいのでしょうか。

この続きは実践の場で習得しましょう。

杉井 要一郎

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