4月第3週号 経営コーチングの難しさと楽しさと奥行きの深さ: この3原則を知れば経営の初歩的な知識を持つことが出来ます。

#113 Authentic Management Coaching

経営者ならだれでも経営が出来ているとお思いでしょうが、経営がそんなに簡単にできるならば経営者は皆成功しているはずです。コーチが知らなければならない基本を覚えてください。これがわからないで経営コーチング、ビジネスコーチングはできません。ではそれらは何かをこれからお話しします。基本中の基本です。

経営コーチング
Authentic Management Coaching

経営者は経営に必要な技術、コア・コンピタンス、資金、マネージメントの能力を誰でも基本的にお持ちでしょう。しかし、実際にそれらを継続して利益を出し、組織を大きくして再投資し、社会的に貢献できるようになるには何度も失敗と成功を繰り返し、常に成功の夢を追い続けてきちんとビジネスを継続していかなければなりません。


新しくベンチャービジネスを起こす場合と家業を継ぐ場合


新しく会社を作って自分のコア・コンピタンスで成功するためには、まず5年間で80%以上の会社が倒産し、10年後には95%の会社が無くなっているという現状を踏まえ、経営というものを軽く考えず、早いうちから経営の基本を学んでいかねばなりません。しかし実際には経営を単なるビジネスと混同している会社・社長・経営者がほとんどです。いくらBS(バランスシート)を理解する知識があってもそれで経営ができるわけでなく、そんなに甘いものではないという事です。

家業を継ぐ場合はベンチャーよりももっと厳しく、それは従業員の継続採用の問題、周囲からの継承者(自分)を見る目、自分自身の継承者としての能力等が経営の継続を左右するからです。特に今まで長くいた従業員役員はそのほとんどが今までの社長に依存していると思って間違いありません。それらの役員の多くは勤続年数だけが多く、何の内容もない人がいるはずです。若い人ならばまだ教えることで軌道修正できますが、このような人たちは、自分がしていることの延長が経営だと思っており、取り除かなければならないリーダーです。
起業して10年以上経つと、そのような人たちが出てきます(権利の主張)。30年も経つと社長の癖に馴染み、社長の顔色を見て言われたことだけをするのがあたり前になっているので、新しいことへの挑戦をしなかったり、新しい思考の勉強も自尊心が許さなかったり、怖くてできないのです。


経営者には3つの資質/3つの種類があります。それらを3原則としてまとめました。

第一原則

チャレンジ精神と自信を持ち、邪魔者をはねのける力を持つこと

①   父親が社長であった世襲の会社の継承者で、新しいリーダーシップを学んできた承継者(典型的な同族会社の承継者)。
・強い思考力と忍耐力(メンタルタフネス)
・ITリテラシーがあり、新しいことへの挑戦が出来る社長です。

②   雇われ社長:コミットメントの決断がされ、自分から株主にならない限り自分ひとりの力量だけでは会社を経営していくのは難しいとわかっている。
・チーム力を上げる、チームの信用を得るようにすることが会社の人材教育であり、マネージメントであると知っている人です。
・チーム力が必要なのです。

③   自分の技術力、コア・コンピタンスがあって自分から社長になる。
・それが本当のCoreになり得るかどうか。Coreに近いだけではだめなのです。
・それらの応用技術を駆使できること
・未来に対しての技術への挑戦力を持っていること

第二原則

経営の基本を知っていること

①   B/S(これはキャッシュフローマネージメントです。)
・資金がなければ会社を経営することが出来ないので、毎月またはこれからの会社経営をするための財務諸表を理解することが必要です。
・経営資金は常に必要です。特に毎月の支払に関する資金の過不足ばかりに関わっていては多くの時間を取られてしまいます。

②   市場に対抗できる継続可能な技術力(Core competence)と市場未来の市場
・ほとんどの会社は現在営んでいるビジネスモデルで手一杯。今後のビジネスモデルのためのドメインとパラダイムへの挑戦力(開発する力)がなければなりません、そのための挑戦力と未来思考への創造思考能力が必要です。
・今まで以上の技術のアイデアで実行可能でなければなりません。

③   会社経営のマネージメント力 
・経営していくためのチャレンジ行動力
・会社経営の全体を見るための全体把握力
・人をマネージするための人材育成力、リーダーシップ力


グローバルで多様化された社会の中での経営は情報に囲まれているので、自分では最適な能力があると思っても、目に見えない強豪相手がいます。時にはそれは自分の自信の場合もあるのです。また海外にも同じようなマーケット、技術がすでにあるかもしれません。そうなると全体から見た自分のコア・コンピタンスは何かということを見つけることができるのです。

知り合いに一緒にやってもらうなどというのはとんでもない話です。大手企業をリタイアしたシニアに一緒にやってもらうなどという安易な気持ちでは大変なことになってしまいます。
大手の監査役をやっていたような人はプロセスには長けていますが、実務は全くできません。ガバナンスの場合は良いのですがそれ以外のところの実務を知らないので、結局は他の人のサポートが必要になるのです。銀行の天下りの人たちをネットワークや顧問として雇っていますが、本当に必要なのは経営の経験者で成功体験と失敗体験を多く持って何にでもすぐに対応できるメンタルを持っている人たちです。

全ては人に依存するのが経営です。

第三原則

経営の基本原則を守ること

組織と人材確保。人材の話です。

①   自分についてくる人がいるかどうか。
・これは自分が本当に信頼されているかに関わっているかです。

②   自分を社長と認める人がどの位いるか。
・マネージメント能力の査定です。

③   新しい技術・アイデアは誰ものか。
・90%以上は自分ではなく応用技術であったり、大手がそこの会社では内容が小さすぎるがために放出する技術です。
・これらは2代くらいは続きますが、3代続くことはありませんので新しい技術の開発能力が自分らにあるのか、それとも外部にあるのかを見極める力が必要です。
・特にITリテラシーが判らないと今後の市場の在り方、パラダイム、ドメインが判らないので大変です。


社長が親兄弟など身内の場合にはその社長の背中を見ながらそれなりの勉強をしていると思いますが、それもすでに陳腐化しているのが日本の現状です。本格的な経営の勉強をしていないと単なる知識や能力だけではやっていけません。もっと大切な目に見えないマインドの強さ(Mental toughness)、回復力(Bounce back, Resilience)等が求められるからです。
継承者の場合はなおさらです。昔のような息子だからですむ問題ではないのです。

最終的にはいかによい人を採用できるか、人を育成できる人を雇えるか、そのためによい人材エージェントの担当者との交渉ができるかです。

全ては人とのつながりです、誰にでもよいところがあります。本質的によいところを伸ばすことが出来るかどうかも社長の器です。

詳細や具体的なことをできるだけ自分で考えていただきたいと思い、内容の詳細を省いています。知識だけいくらあってもそれらを駆使して行動しなければ意味がありません。
それこそが経営なのです。

もし質問等があれば些細なことでも結構です。遠慮なくご連絡ください。

杉井要一郎 / 2016年4月第3週号 © All rights Reserved by Gledis Inc.

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