4月第4週号 発達段階的に全ての物事が始まる。



#6 エグゼクティブコーチ

「状況は変わらない。自分たちが変わるのである。」Henry David Thoreau


人は子供から成人になり、そして大人になっていきます。これが縦の進歩だとすると、学習は自分が何を持っているかという水平の進歩で、成長により自分はどういう状態にあるかということを探索するのです。
子どもの頃は早く大きくなりたいと思い、大人になるともし生まれ変われるなら、こんな人に生まれ変わりたい、生まれ変わるまでいかなくても、あのような理想的な人になりたいと思うことがあります。

「発達段階(developmental stage)とは、他の年齢時期とは異なる特徴を持っている年齢時期のまとまりを指す。個体の発達過程がなだらかな連続的変化だけでなく、飛躍的に進行する非連続的変化をも表すと考えるとき、相互に異質で独自の構造を持つとされる一定の区分された時期。」(ウィキぺディア) The origins of Intelligence in Children,  Piaget. J.(1952)


  人間の8つの発達段階






■子供の発達段階



特にコーチングは人を手助けする仕事であり、その対象は人間の学習と成長、これが一番の基本です。成長過程のクライアントの現在位置を知ることが大切であると前回お話ししましたが、同様に人生におけるクライアントの位置を知ることも大切です。この発達段階は、人生という一つのプロセス中のマイルストーンに対応づけられているからです。

そしてクライアントの人生にマイルストーンがあるがごとくに、並行してコーチにもマイルストーンがあるのです。これらは見えるものではありませんが、コーチがクライアントと接する際に一番大切なことです。この発達段階が明確に準備されていないと不具合が起こります。特にエグゼクティブの方々は発達が早く成熟しています。その成熟度を知らないとコーチはクライアントに対して非常に失礼な態度をとることになってしまいます。

ビジネスの為にMBAMaster Business Administration)を取る方が多くいらっしゃいます。これはあくまでも私的な勉強で、MBAはその学校の修了証明書にすぎず、実際にどの程度のビジネスを熟知しているかが重要なのです。ケースメソッドを知っているほうが良いには違いありませんが、実際の経営をしているトップのエグゼクティブの人達はそのメソッドではない、もっと真剣なビジネスと向き合っているのです。ですから戦後日本が海外からビジネスを学んでいるころはMBAを持っていることで優位に立つことがありましたが、今ではそのようなことはありません。もちろんMBAを取得しているほうがよいには違いありませんが、今ではどこの学校でもとれ、ビジネスの知識を勉強しているだけです。これも発達段階の初期の一つのマイルストーンと思ってください。MBAを持っている、私はコンサルの経験があるというように上から目線でクライアントに接するコーチはまだまだ駆け出しのコーチで、これから多くの経験と学習が必要です。

コーチングは、人を第三段階(共同社会の成員)から第四段階(自己創造)に移行させるために発展してきた社会的な仕組みです。適切なコーチが居れば、恐らく第四段階から第五段階(エグゼクティブコーチのような自己への気づき)にも移行させることが出来ます。これらはコーチの能力と資質によります。ライセンスを取得したといっても誰もがそのポジションにいるわけではありません。エグゼクティブの多くの人は一般のコーチとは比べ物にならない位の大きな器を持っているのです。MBAと同様、いくらコーチングのライセンスを取ったといっても99%のコーチは経営には関係ないビジネスコーチです。現在の日本ではライセンスを欲しがる人にライセンスを販売するような商業主義が蔓延していて、何でもいいからライセンスを与えれば良い、ライセンスを取る本人も取っておけば将来になにがしかの役に立つと思って、 FP(ファイナンシャルプランナー)、介護事務、簿記などいろいろな資格を取っています。新聞や雑誌などの宣伝を見ても資格ビジネスの花盛りです。しかしそれらを持っている人が本当に有効に資格を生かしているかというとそうではなく、ほとんどの人は相手のペースに乗せられての自己満足です。

コーチング、英会話、ファイナンシャルプランナーの資格を取りましたとは言っても、その人の何が本当のプロフェッショナルかはわかりません。その人がこれから一生懸命経験を積み、何が自分にとって一番適しているか、クライアントを満足させ、投資効果を上げさせることが出来るかをプロとしていつでも提供できるようにならなくてはいけません。そのためには自分の得意分野を研鑽し、クライアント以上の発達段階にいなければならないのです。

コーチングにとって大切なのは人間性に対する楽観的な見方、自己実現を行う自然な行動です。これらはMaslowが「自己実現」と呼ぶもので、クライアントの自己実現を真剣に扱います。コーチはクライアントのために多くの事を援助・サポート出来ると考えています。クライアントに目標達成を強いるのではなく、クライアントが目標を達成し可能な限り成長することを妨げている障害物を取り除くことに重きを置いています。人は幾ら成長しても知らず知らずのうちに自分の限界を作っています。(潜在意識の中のLimited Belief)。しかし作られたものならば、それを壊すことも出来るのです。ですからコーチングは目標達成に必要な成長の気づきを与えるのと同時に潜在意識の中のフィルター、壁を取り除くための気づきをも与えるのです。

それらを可能にするコーチは、自分の叡智を養い、精神を鍛え体技心の意味が分かり自分の信念だけでなく第三者としての観察力と洞察力を養った大きな器のコーチになるための学習と経験そして人生の多くの経験と忍耐をつまなければなりません。

器の大きいコーチになるには、それなりに発達段階的に器を大きくしていくのが一番手っ取り早い方法ですね。

詳しくはまたいろいろな機会に於いて学習しましょう。

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