見知らぬ国、未来に向けての旅路の挑戦(Transformational coaching)11月第5週号

#40
空飛ぶ絨毯に乗り、雲の中を通って、地図にない未来の世界に行く
~見知らぬ国、未来に向けての旅路の挑戦~

人生は、2~3泊の旅行(Trip)とは違い、いろいろな楽しみや危険、思いもよらない出来事に出合う長い旅(Journey)です。

クライアントは自身が本当に知らないことを、Executive coachの質問等のサポートによって、気づきを引き出してもらいます。それは直観でも、思いつきでもありません。

ではどこからアイデア、ヒラメキ、Ahaを出すことが出来るのでしょう。

私どもはこの10年間、「エグゼクティブコーチングは本当に必要か?」ということを研究してきました。
エグゼクティブコーチングが今日のように社会に認知されていないころから多くの経営者を対象にコーチングをしてきましたので、経営者の一般的な気づきと言われているものはそのほとんどが戦術レベルでしかないことがわかっていました。

質問による気づきは最も基本的なことですが、エグゼクティブコーチングにおいては、それだけでは全く用をなさない、一般のコーチングと何ら変わりないということがわかりました。

それが短期的なゴールのための気づきならば話は別ですが、トップエグゼクティブ達は常に難易度が高いことに挑戦的で、未来のビジネスモデルの為には戦略さえも平気で変える人達です。競合他社が新しい商品を開発した時の戦術とは全く別の、時代を先取りするようなシナリオ創造においては長期的な投資も考えなくてはなりません。そのための特別なノウハウがあるはずです。

直観はご存知のように自分の知識や過去のデータの奥深くに蓄積されたものと新しい情報との融合により出来たものであり、自分の中で完結するような形で出来てきています。

そこには3つの方法があります。

最初に、これは思いつきと同様浅い潜在意識からの抽出です。
これらを取り出すためにコーチは顕在意識と潜在意識の間にある障壁(バリア、フィルター)を通して新しいアイデア、直観等の関係性を取り出しているのです。

でも、この情報だけでは新しい案件、新しいひらめき、不断に出来るようなものはあまり出来てきません。

二番目に、エグゼクティブにとって必要なのは、コーチ、コンサルタント、自分も知らないアイデアを引き出してくれるような会話・コミュニケーション、質問による新しい思考法で今までにない内容のものが出来ることです。

私どもが常に追及していることは、コーチもその答えを知らない、それどころか質問の方法も知らないようなドメインのコミュニケーションで、相手にとって困惑するような内容の話をすることです。
相手も自分が知らない/考えてもみなかった質問をされることにより、一生懸命考えて、コーチとクライアントがお互いの思考をぶつけあう事により、直ぐその場でということでなく、一定期間たった時に何かのきっかけでその会話の解決を示唆するような突飛もない連鎖、アナロジー(Analogy)思考ができるのです。
これが私たちが求めていたPower Question です。
色々なアドヴァイスや、本を読むことにより、大きな気づきが生まれる事が多くあります。

そして三番目には、チーム又はその課題に興味がある人達が、いろいろと幅の広い範囲に話を広げていった時に、その話題がシナプスのぶつかり合いにより全く新しい課題を提供してくれるのです。
この課題を解決しようとすると脳の中で思考が始まり、最初は抽象的な内容から始まった思考が次第に具体的になるのです。
このような状態を藤井直敬教授は社会脳と呼んでいます
新しい課題とその解決策のヒラメキを時間をかけて創出するのです。

このチームによるディスカッションの中で比喩による類推により、新しく拡張した思考が生まれるてくるのです。

これらの3つの状態をコーチがはっきりと理解して、この3つをハイブリッド化、プロセス化することにより、多くの人に今までにない課題の創出を促すことができるのです。

チームの場合、コーチはチーム内でのディスカッションの際に意図的にコンフリクトが起こるよう仕向ける場合があります。

コンフリクトを起こさせる場合にはグループ内に対極思考(Polarity)を起こさせるのです。
馴れ合いになっていたり、安全パイに陥って冒険をしたりしなくなり、相手を非難しない環境を作り上げてしまったチームには新しい冒険どころか気づきも出なくなっている場合が往々にしてあるからです。

また誰か、特に出来る人がいたりすると,皆その人に頼ったり、任せっきりになってしまって思考が停止しているのです。自分で考えないからです。
大声で話す場合も同じです。大声で話す人は他の人の話をあまり聞いていなかったり、自分の事しか考えていない人が多いようです。特に組織の上にいた人は自分の耳が他人の意見を聴くようになっていないのか、あるいは本当に良く聞こえずに、その結果自分の主張ばかりします。

コーチの出番です。
この場合、コーチではなく誰か別のリーダーがそれを出来る様になるのが一番良いのです。
コーチはこのようなことが出来るという自信を持ってコーチングにあたっています。
コーチに必要なことは、様々な場面での経験があり、いろいろな場面での気づきを出させる特別な訓練と経験、コーチ自身にも同じことが起きるようなセルフコーチングのスキルを長年にわたって身につけていくことです。

コーチは特別な知識とかノウハウを持っている必要はないのです。どのようにクライアントを新しい思考に導くか、そのクライアントの性格を知り、クライアントのコーチに対する信頼を獲得することがコーチにとって一番重要かつ必要なことなのです。
コーチの自信と信頼性があって初めて今まで話したようなことをクライアントから導くことが出来るのです。
そのためにはもちろんコーチ自身の器が大きくなくてはなりません。
またエグゼクティブに対してそれだけの器量と技量と度量がなければ、クライアントと同じ土俵で話すことは出来ないのです。
相手の会社やプロ並みにビジネスに精通する必要もなければ、そのための勉強をすることも必要ありません。それはコンサルタントの仕事です。
コンサルタントは創造性を働かして無から何かを作り上げることはしません。
自分の持っているコアコンピタンスを提供するだけです。

コーチは本当に大変です。自分の知っていることを利用するならばコンサルタントになればよいのです。しかしコーチです。知っていることなんぞにかまって居られないのです。

これが時代の要求ですし、本物のGenuineコーチングだからです。
                                                                             
杉井要一郎

201411月第5週号 © All rights Reserved by Gledis Inc

コメント