6月第5週号 絶対に自分は出来るのだ、と自分に自信を持っている人は読んでください。 情報の選択、決断や行動を他人に任せることができない人やリーダー、上司必読です。

#70 Management Coaching


これはモチベーションとエンパワメント(責任と権限の委譲)の話です。

 

リーダーとチーム内フォロワーの間では上司が部下に任せられると思ったことはなんでも任せるのが一番良いとされています。それは上司が部下のレディネス(仕事を任せられる能力)があると判断した時です。 

 

私もそうなのですが、人には自分の存在感を部下、周囲の人、たまには自分自身に対しても示そうとする傾向が潜在的に誰にでもあるのです。


自分のエゴである自尊心の強さは見せないつもりですが、自分はなんでもできるのだということを実際にやって見せることをしてしまうのです。
それ以外では自分自身が仕事を完遂するという達成感や満足感を自身で得るためかもしれません。

リーダーはいつも頭の中で自分が部下や周囲の人にどう見られているか、自分のプレゼンスである存在感を示すことが部下にとって非常に大切だと思っているのです。
「みなさん、私はこんなにできるのですよ。」というリーダーとしてのお手本かもしれません。相手もそれにより、この人はなんて素晴らしい能力の持ち主なんだろうと尊敬します。その場ではお互いが満足しますが、よく考えてください、でもそれがなんなのでしょう。

リーダーの自己満足にすぎません。相手もそれで感謝して終わりです。

結局の目的は強い自尊心によって自己満足をしただけで、会社の未来に対しての成長貢献にはなっていません。
部下は次の課題、プロジェクトに関してまた上司に指示を仰ぐでしょう。

Leader and readiness

本当にあなたが必要としている会社の未来への成長戦略は、あなた自身を鼓舞することでは絶対にないはずです。未来に結果を残すためにあなたの能力以上の能力を持つように部下を育成することではありませんか。それこそがトランスフォーメーションなのです。

そうです、部下から見た良い上司・本当の上司とはその人が持っている能力よりももっと上の能力を引き出してモチベーションを上げてくれる人を言うのです。
その人に能力があっても自分で全てを行うことが最適とは言えないのです。

20~30年前までの日本の工業化社会においてはトップリーダー、工場長、部門長がなんでもできる所を見せることがリーダーシップだったのかもしれません。
その頃はブルーカラー80%、ホワイトカラー20%の時代でしたからそうして手本を見せる必要があった時代だったのです。
これは思考というよりも効率を高めること、生産性を上げるという、精神的な労働を伴っていた時代です。
そのころのリーダーは今でもその自分の癖が治らないのです。
この頃のリーダー、幹部が今ちょうど戦後70年を迎えて、次世代への交代時期に差し掛かっている時です。

2000年になってから情報化時代になりその環境はだいぶ変わってきました。
その頃になると上司は自分で全てをやらないようにして、代わりに部下が目的地にきちんと到着するようにファシリテートするようになってきました。このファシリテーションのおかげで部下もだいぶ自分で考えて行動するようになり、自己成長するようになったのです。
今年、2015年の時点で日本はホワイトカラーが70%に達しています。
それまではIT産業でさえも机の前に座るブルーカラー(労働提供者)でした。

今では営業でさえもソリューション営業と言ってだいぶコンサルに近づいてきましたが、プログラミングに関しては依然ブルーカラーです。これらの業務は中国、インド、その他の労働賃金が安い国に移転しています。日本の場合はほとんどがオートメーションになっているので本当のブルーカラー、3Kは少なくなっています。

ではリーダーにはブランド作りは必要ないとすると、何が必要でしょう。
リーダーの本音をあげてみました。

自分ができるというところを見せたい。または部下から上司はなんでもできると認めてもらいたい。そのための証拠作りと自分自身の体を休めたくない、忘れられたくない。
リーダーである自分が何もせず部下が全部するなんて自分が必要ない・価値がないみたいになってしまう。

ではリーダーはどうすればよいか。システミック思考をすることです。リーダーは自分でするのではなく、全体のシステムの動向の把握をするのです。
これを統合システムと言います。全体を把握する際には部分をどのように有機的に繋げたり、離したり、リソースの配分をすればよいのかも見るようにします。いろいろな方面から見ることができるような能力をつけることです。

大切なことは自分でやるのではなく、部下が一番パフォーマンスを上げるにはどうしたらよいかの全体像を考え行動させることです。

そのために部下にゴールに向けて自由裁量の権限を与え、責任を持たせるのがモチベーションです。

部下は今まで上司がやっていた事の責任と結果を任されたことにより、自分の能力を認めてくれているという自己認識と満足感を得、自分の価値観を認めてくれた上司に感謝するだけではなく自分のモチベーションが高揚することを覚えていくのです。

上司の仕事は部下にそのような環境の提供をすることであって、もちろん知らないことは教えなければなりませんが、任せることが出来る仕事の環境と部下の持っている能力を向上させるように仕向けるのです。

上司の皆さん、あなたは何もしない/できないのではなく、部下にとって必要な未来への道筋を探し、その目標に向かって実行させるようにすることが上司の仕事なのです。

そうすることで上司は自分の自由な時間を増やし、もっと未来の事を考え、潜在能力を高める仕事に就く余裕ができるのです。

この複雑で劇的に変化する時代に、一人ですべてを把握することは不可能に近いことです。Flexible Management, またはどんなことにも対応できる Adaptable Management が必要になってくるのです。

そのためには自分でやらないで部下に権限と責任をどんどん持たせて行くのです。これを権限と責任の委譲のためのリーダーの忍耐といいます。
あなたにはこの忍耐力がありますか。失敗を恐れない行動を見せることが部下が失敗しても再度挑戦する力をつけることになるのです。

詳しいことはまたImmunity(免疫)、Resilience(回復力)、Mind toughness(強い気持ちの持ち方)でその先をお話します。

杉井要一郎 / 2015年6月第5週号 © All rights Reserved by Gledis Inc.


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