8月第5週号 トップが失敗した時のトップの恩返し、倍返しということを、あなたは考えたことがありますか。

#79 Performance coaching

もしあなたが会社のトップの立場で、やんごとない事情で会社外の人とのアポイントメントを急にキャンセルすることになった時にあなたはどのように対応しますか/していますか。

パフォーマンス・コーチング

待ち合わせ、会議、打ち合わせ、交渉を急にその日になってキャンセルする場面を考えて下さい。なにごともあなたの自由ですので、自分の都合に合わせて会社を動かしていますね。

今度は相手の立場になって考えてみてください。この様な事は日常茶飯事なので誰も文句も言わないけれども、心の中ではどんどん蓄積され、文化と言うものになっていきますね。

第三者から見てみましょう。いまはアポイントメントのキャンセルと言う例を使っていますが、何かほかの内容にリフレームしても良いですし、メタファーにすることも良いです。メタファーにするのはとても重要です。
大切な人が海外から来たにもかかわらず、会議に出られなくなってしまった場合も想定できますね。会議で決まった結論を反古にしなければならない時もあります。
結婚式に参列して挨拶を頼まれたのに参列出来なかった主賓もいます。
大切なのはトップが約束を履行できない事態が発生した後、どの様にその後の処理をするかです。そのためのPreparation準備が必要になるのです。

自社内のことならば、培った文化の蓄積の一部とみなされますが、自社以外の他者に対してはそうは行きません。相手がどう思うかは短期間の心理状況ですので、潜在的なものよりも、顕在的な感情が直接一気に表に出る事もあります。その場合の対応プロセスを間違えると将来とんでもない結果を招きかねません。このインシデントをチャンスととらえ、今迄よりも良い関係になることを意図して、単なる埋め合わせをするだけではないと自分に言い聞かせて行動をしなければなりません。
相手の大切な時間を取ってしまったのですからそのことを一番に考えなければなりません。

次に時間は絶対に取り戻せません。また次のアポイントメント、すなわち相手の時間を拘束するのですから2重取りをすることになります。相手がそれを簡単に受け入れてくれたとしてもその裏があるのです。

よくこういうことが起こります。コーチングの約束をしていて急にキャンセルになりました。所謂ドタキャンです。大手のトップにありがちな、大切な緊急会議になったとか、体の調子が悪くなった時です。

第三者から見て、これらは倫理の問題と片づけるにはあまりにもお粗末です。はっきりとしたルールも必要です。
もしこのような事が頻繁に起きたら、相手は何を感じるでしょうか。このようなことが起きたときに、あなだったらその相手に対してどう感じて、この後どのようにしようと思いますか。それが目下の人であれ、目上の人であれ同じです。

そしてこれからが大切です。相手は何と思っているでしょうか。それを考えることが次にどうすればよいかに繋がるのです。それらをクライアントにわからせるのがエグゼクティブコーチです。

もっとも大切なのはコーチが第三者である時にはクライアントにきちんとした行動をとるように指示することです。これは明確な指示をしなければなりません。

先ず相手がどの位の価値観からの心的損失をしたのかは自分ではわからないでしょうからそれらの気づきをうながします。損害を与えたのは明白です。ただ相手に対してオーバーにお返しをすることや、自分を卑下することは絶対にしてはいけません。自然にふるまうことが大前提です。

次に名誉回復です。

人間の性格として多くの人はのど元過ぎれば熱さを忘れ、ふつうの状態にいるのです。それは自分の責任ではないという気易さです。ビジネスにおいては責任の明確化と結果責任を取らなければなりません。

言い訳をするのではなく説明をするのです。それが報告責任accountabilityです。

あなたの勝手な変更で物事を変えてしまったのですから、それを元の姿、他人から見たあなたの価値に戻さなければなりません。
あなたは一度、信頼を失っているのです。
その失ったものの大小は関係ありません。信頼を回復するためには今迄の倍以上の努力が必要です。信頼の上にある信用を取り戻すには今迄の3倍の努力が必要なのです。

これはあなたが一流か二流かによって違います。又相手からあなたが一流か、二流かのアセスメントをされることにもなります。いずれの場合も相手に敬意を払わなければなりません。一流、二流はあなたが決めるのではないことがお分かりになったと思います。小さい行動、言動、約束の実行の積み重ねで信用が得られるのです。

エグゼクティブの仕事の大切な一つにプロトコールをしっかりとすることがあげられます。これは相手とのコネクションがどの位強いのかの尺度です。

あなたは必要とされているか、必要とされていない人か、どちらでも良いとされている人か。人生の分かれ道です。


  • あなたは建設的な質問をする人ですか、
  • あなたは建設的な質問をされる人ですか、
  • あなたは他の人が出来ないようなパワー質問ができますか。
  • あなたは自分では知らない事、相手が知らない事の質問をお持ちですか。

仕事上、又は会社の中での場面を思い浮かべてください。個人関係の場面を思い浮かべて下さってもやや状況は違いますが、それでも結構です。

これからの育成にはコーチングの要素が必要です。コーチングの要素とは傾聴の質と相手に気づきを与えるためのコミュニケーション能力です。別に質問ではなくてリフレーミング、メタファーでも結構です。そのためのプロセスとコンピタンス全体を構築してあればよいのです。

ここまで来て、ご自分の器がお分かりになりましたか。自分の器とは、自分が感じるものではなく相手があなたを評価するものです。相手から評価されるものです。初めて会った時から始まっているのです。価値観は後になってついてきます。その人が価値ある人だと思われるようになるには自分の精進と努力、忍耐が重なりあって行動力につなげるようにすることを継続的に行うことです。

これがエグゼクティブコーチングの始まりです。これはあくまでも表層的にわかることです。これから内面的な深さに入っていくのです。これは経験だけではなく、本質的に強い軸にならないと自分のプレゼンスが湧き出てこないので相手からは重要視されないでしょう。

さてあなたはこれらのプロセスをどのように構築していますか。建設的なプロセス構築を知らないと自分がどこへ行くのかもわかりませんね。
それらを導いてくれるのがコーチです。

これ等がわからないコーチにつくと大切な人生を棒に振るか、違う道に迷ってしまうことになります。
全て自分のコミットメントから始まるのです。コミットメントなきところには行動がついてきません。行動なきところには成果が出てもそれが自分が求めていたものかどうかもわかりません。そのためにゴールのビジュアライゼーションを構築することが大切なのです。

ここ数日涼しい日が続きます。風邪を召しませんように。

 杉井要一郎 / 2015年8月第5週号 © All rights Reserved by Gledis Inc.

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