【特別投稿 20,000PV記念】承継者・後継者(育成コーチング)経営者の悩み: 経営者が今遭遇している一番の悩み、でも真剣に相談する相手がいないのです。自分が一番相談に乗って欲しいのは親身になってくれるだけではなく、実際にその問題解決実績もあり、且ついくつもの体験をしたこともあり、後々までも伴走してくれるコーチです。

#74 Performance coaching

戦後70年、日本の屋台骨となって経済を支えてきた中小企業の事業継承者の問題が深刻な社会的問題として取り上げられています。どのようにして跡継ぎにするか。今の社長とのギャップをどのように埋めるのか。事業承継の問題は、これまで社長に長く従ってきたシニアの幹部社員、役員、中小企業の社員にとっても大きな心配事であり、人材育成のあり方の問題です。


これは重要かつ緊急の課題です。後継者/承継者により人材育成の期間もアセスメントも、会社のコア・コンピタンスも変わるからです。

上場している大手企業はそれなりにきちんとしたプログラムを持ってこの問題に取り組んでいます。例えばコマツですが、10年以上前からコマツWAYと呼ぶプログラムを社長以下役員全員で2年かけて次期役員、子会社の社長の後継者あるいは新しくその役についた新人を育てているのです。

中小企業はどうでしょうか。大手のように準備してきた会社でない場合にはいろいろな育成方法があります。
山登りに例えると、これには3つの方法があります。
  • 一つは非常に困難な北壁からアタックしていく方法です。一度は登ってみたいルートの先にある山頂です。 (a)
  • もう一つはそれほど苦労しなくても登れると思える南壁ルートから登る方法です。  (b)
  • 3つ目は他のプロの人に手伝ってもらいながら登るのです。 (c)

(a) の北壁は様々な訓練をし、プロジェクトが計画通りにいくかどうかもいろいろな人を交えて未来に向けて準備をし、勉強もします。これらの長期的かつ重要事項に対して準備をしっかりします。それはまさにプログラム・プロジェクト・マネージメント(P2M)です。 

(b) は特に問題にしておらず、このまま登り続けていけば山頂にいけそうなので、あまり深く考えたりしていません。準備も心配もそんなに長期的にはしていません。でもいつかは登らなければならない問題です。特に家族経営、親族でまとまっている会社こそいろいろな課題を抱えているのです。それは外からは見えない課題です。

(c) は、これは社長が築き上げた自分の会社なのに、しっかりと後継者を育ててきていないので、社内に適任者がおらず、安心して任せられる人を外部に求めるということです。会社は売上・利益ともきちんと出しているのですが、後継者がいない時です。いろいろな所に声をかけての採用です。これが上手くいかない時にはどこかの企業に株式を売って会社をM&A(merge and acquisition)してもらうしかありません。

皆さまお分かりのように(a) の北壁を昇って山頂に行くようにすることが大事なのです。

困難な登頂であればあるだけに、そのことを役員、社員全員が理解して、意識の上でも一枚岩になって克服しよう、全員で何とか頂上に行き着こうと一致団結して行う作業です。困難な登頂であることを理解した上で、一つの明確な目的が集中して見える事です。

次の南壁は自分では問題ないと思っているのですが、ここに落とし穴があり、この壁はそう簡単には頂上まで登れないのです。登るのは簡単でも登ってからあるいは登る途中にいろいろと問題が出てくるのです。
特に承継者になる人に息子とか親戚になると今の社長の威光が非常に強く働くのはもちろんで、直ぐに出来るかと言うと、そこに潜んでいる親子との感情的な課題をキチント解決しておかなければなりません。
周囲の目も気にしなければなりません。それは自分よりも会社をよく知っている昔からいる社員、役員の人達、取引先、社長の友達、ネットワークなどです。

3つ目の社長役員候補を外から採用する方法としては、取引先、銀行、株式を持っているところ、あるいはコンサルタントや人材銀行(Headhunter)への紹介依頼、特に中小金融公庫との株式持ち合い等による銀行の退職する人の斡旋などが多くあります。又M&A先は必ず人を入れてきます。

社長は、自分のヒラメキ、直感でいろいろな事を決定しますので、その業界でも何でも言うことを聞いてくれる人がよいのですが、銀行関係からは会社が融資をしてもらっている関係から、人を入れてくれます。コスト関係の資産管理会計がわかることから財務に関しては非常によいのです。しかし人事や未来への戦略に関しては、経営者になったことがないので、銀行関係者等との仲間内での仕事になり、大きな投資やかけのようなことは最小限にし、守りの経営になってしまいます。しかし信用のおける人材であることには間違いないでしょう。そして縦割り社会から来た人なので命令に関してはしっかりとしています。

では銀行にすべてをお願いすればよいのでしょうか。お金とネットワークさえあればよいのでしょうか。そうはいかないのが経営です。コンサルタント等もいろいろなケーススタディーをしていますが、経営をしたことのある人は稀で、勉強はしていますが、守りの経営が得意です。もし今売上げが良いと攻めの経営はできません。ではヘッドハンターに依頼すればよい人を連れてきてくれるのでしょうか。ヘッドハンターの場合、その人を良く知っているわけではないので、信頼のおけるよいヘッドハンター(agent)を探さねばなりません。またその人をしっかり教育してから入れてくれるわけではないのですからお金も多くかかります。Retained方式と言って最初にお金を取られることがほとんどです。自分が求めている人材で、相手もその会社をやりたいと思っている人を10名位紹介してくれます。しかし社長経験者とは限りません。Agentの中で誰がどの位できるのか、どの仕事に対しては信用があるのかのランクがついていますので変な人はあまり紹介をしてきません。20年くらい前までは、信用調査で個人の情報、会社、近所の人、探偵まで使って調べ上げたものですが、今では個人情報漏洩とかで一切そのあたりは開示してもらえません。従って紹介のそのまた紹介くらいになると昔ほどの信頼性はありません。またJOBハンターばかりをしている人もいるので要注意です。

自分の息子、娘に子供のころから様々な経験をさせ、息子や娘が自分から遠い外の世界に出ていくようにさせ、大きな会社、中位の会社、小さな会社で修行をさせ、自分の会社に10年、15年後に入れて、一般社員と一緒に仕事を覚えさせることが一番です。息子にMBAをとらせてもただ知識とケースで学習するだけで、今ではそのような人は欧米では敬遠されています。何社かの経験を積ませるのもよい修行です。日本と海外ができればよいですね。または海外の学校で勉強させるのもいいことです。これからは英語が必須です。

子供を自分の会社、自分だけの小さな柵の中で育てるとその中のことしか知らないのと、父親に頼りすぎていたために、自分が何でも親に頼れることが出来るという依存心がつきすぎてエゴになり、人間関係が自己中心過ぎて気持ちの豊かさがきちんとできなくなります。



何故かというと、

今まで社長は本当に人生の全てをかけて、難行、苦労をして成功を収めてきたのです。世の中の激変する経営を早く任せられるような経営者を育てたい、でも自分も年をとって来たし、周りの人達も年をとってきた。
早くバトンタッチできる信用できる後継者を見つけたい。または家族の中から育てたければいけないと思っていますが、それほどの苦労してまで教育をさせてきていません。この自分の時と全く違った経営、リーダーシップ、ビジネスモデルの早い変化、ITリテラシーのデファクト、人間関係のオープン性、は昔の自分らにとっては程遠い経営感覚になっているのを知らないからです。

特に後継者問題に関して抱えている課題は;

  1. 一生懸命勉強するように自分なりに教えて、自分と同じ苦労をできる環境を作り経験をさせました。
  2. 自分が大株主の場合には特に承継者は身内から出したい。なぜならばここまで一生懸命死にもの狂いで働いてきたのは、家族の未来永劫の幸せを築くはずでした、そしてそれを全くの他人に渡すには未練がある。
  3. 会社の社員は何を思っているのか、よりもいつ承継者を立てるかのほうが緊急になっている。
  4. 社長は何を持ってバトンタッチが出来ると思っているのでしょうか。二人で話すとすぐ意見の対立になり、自分の思って居るような会社になりそうもなく、未だ心配でしょうがない。なぜならば自分が全ての銀行保証をしているからです。
  5. 息子に約束をしたのですか。お互いの条件の約束をしたことがありません。社長として任せる責任感を渡せる条件と出す側と受ける側の条件です。
  6. 他のことには目もくれずに、自分が築いた城、資産は後継者としての身内に継続してやらせると考えるのが日本の常識になっています。これは欧米では会社成功の法則には当たりませんが、日本の風習では後継者は身内から出すのは当たり前の習慣感情です。会社を設立したのはIPO(新規上場)の為ではなく自分の城として経営してきたからです。これは税法も加味しているので何が良いとは言えません。
  7. 会社の存続のためにどうするかではなく自分が築いた城を誰に継がせるかが目的になっているのです。
  8. その権限は大株主、創立者である現在の社長自身の手にある事は間違いありません。又、過去にも融資をしてくれた金融関係の方にもそのように話してきたのです。
  9. 自分は本当に社長後継者になれるのか、社長はそうは言ってくれたけれどもなかなか現実には社長にはなっていないし、またコミットされたわけでもない。そして社長の目が黒く生き生きしている間はそのような人に、自分から今の社長に辞めてくださいともいえない。

そんなこんなでいるうちに社長に対して、煮え切らない態度に嫌気がさし、お互いの不信感がでてきて、家族なのに、互いに話もしなくなっている。
仕事上でのコミュニケーションもなくなり、社員から見てもこの会社はどうなるのだろうとみられているよくあるお家騒動です。

大きな会社の場合は外部からの経験者、外部監査役、取締役を雇っているのでいろいろな見方をすることが出来ます。又コーチやアドヴァイザーを雇ったりしていろいろな人の意見を聴くことが出来ます。会社が上場しており多くの株主がいる時には尚更株主の目があるからです。
でも中小企業の場合は、社長が後継者を決める殆どの実権を握っているので、ここでいろいろな個人的な思考が入ってきます。後継者に対する信頼感です。最終的に誰を信じ未来を託せるかと言う安心感を自分なりに考え、いろいろな人にも相談して論理的に解決できるようにするのです。

問題は社長が大株主でその跡継ぎを誰にしようとして考えている時です。

今年2015年~20年はそれが一番多い時期です。

戦後70年経った今、ちょうど70歳を迎えた一代目の跡継ぎをした2代目社長が3代目と交代する時期です。または列島改造論で成長した中小企業が設立40年を迎えているのです。
息子が30歳半ばから40歳代位で、是非とも息子に後を継がせたいとそのような話もしたりして、息子も役員の肩書を貰ってそのつもりでいる時です。
でも社長はそうは思ってもなかなか社長の座を渡さないのです。ここにきて社長が会社への執着心を捨てきれず、手放すのが惜しくなり、息子が自分と比べてまだまだ努力が足りない、頼りないと思いだすのです。自分もまだ元気でやれると思っており、実際に毎日会社に来たりしています。

息子も将来は社長にすると言われてからだいぶ経っており、未だに社長にしてくれないので嫌気がさしてきます。社長の決断の無さに会社を去って行った息子も居ました。
それならばまだ若いのだから一度は違う世界に飛び出そう、もう父親と将来についての意見も違うし、もっと挑戦できるところで自分の可能性(potential)を試したいと思うようになったのです。

息子に対する父親としての未熟さと、自分が直ぐに社長を辞めるのが惜しくなり未練が出てくるのです。これは社長にはよくある子離れが出来て居ない感情と欲です。
親が今まで頑張りすぎた結果、子供が育たなかったり、自分の家族に何かが起こった時に、こんなに努力をして、家族に尽くしたのにと最後まで納得がいかなかったり、努力が無駄に見えるのです。

それも正しいし、間違ってもいるのです。
両方が歩み寄るためにはお互いが納得できるように論理的に話をするのが一番ですが、すでにその時期は逸しているかもしれません。

このような心配事の相談は毎年多くあります。最終的には落ち着くところに落ち着くのですが、何回も駄目になった例も見ています。お家騒動です。その時には社長が決めたことがほとんど最終決定になりますが、社長もいろいろと相談した結果です。又社長は心労のため、どんどんと経営から自然と遠のいているのです。自分で気がついて居てもしがみついている執着心が尚更でてくるのです。社長も何時健康を害するかもしれませんし、その他の理由で会社に行けなくなるかもしれません。

父親が変わらないから息子は悩んでいるのです。
父親は会社と自分が変わって行くのを見つめて悩んでいるのです。

現在だけが真実で小さな信念、限られた信念なのです。未来の希望とか価値観を考えるよりも、お互いがイライラするとき、息が詰まるときに、変わるから悩んでいる、あるいは変らないから悩んでいるということに気づいてください。第三者がこの未来のマイルストーンを気づかせることにより、自分らの頭の中が整理されてしっかりしてきます。人生に安定感が出て、安心することが出来、気持ちが落ち着き、イライラがなくなり、家の苦労がなくなり、人生を再度謳歌できるようになるのです。そのような冷静な思考法を与えるのが第三者です。

コーチは人生の経験者としてこのようなことを知っていることが必要です。
そうすることで皆を再度人生を楽しむことが出来る方向にむかわせてあげることが出来るのです。今ある相違点を受け入れ、非難しないで再度話あうことができ、それらのギャップを調整すれば良いのです。

エグゼクティブコーチングに関しては良くこのような息子を承継者として立てたい場合に息子とその社長である父親、母親、叔父(伯父)。叔母(伯母)、親戚などの様々な人間模様、知識、資質の問題への対応を迫られます。

よいこともたくさんありますが、ほとんどは問題だらけで、年間に何件も同じ課題と出会います。結局は社長が主導権を握っているのですから、社長がどうしたいかを、会社を承継だけでなくどのような会社にしたいのかを明確に出来るかどうか、息子に対するどのくらいの信頼感があるのか、息子がどのようになったら社長の座を引き渡したいのか等から入っていくのです。

エグゼクティブコーチングの重要な役目の一つは息子を育てる役目です。
もう一つは社長をやめて息子へ社長職を譲ってもらうという伝達の役目です。
一番きついのは社長と息子が戦っている場合です。
大株主が社長でない場合もいろいろと問題があります。昔からの会社ですと、叔父・叔母(伯父・伯母)又はその他の人が過半数を占める大株主の場合です。

これ等の場合には単に株だけでなくお金も大きく絡んできますので、M&Aも入ってきます。
そうなると相続の問題も絡んできますので、もっと大きな問題になるのです。
これ等に関しては税理士、公認会計士、弁護士との相談も必要です。

いくらいろいろな事を考えても社長は基本的には息子よりも先にこの世にいなくなるのです。もしものことがあった場合には今から承継の事はしっかりけじめを今の内につけておかなければなりません。

問題は社長の見栄と欲と心配性です。社長がどんな会社にしたいと頑張っても気持ちだけでは後に何も残すことは出来ません。せいぜい借金と、人事の問題、家族の株式の問題だけです。

新しい社長は前の社長の偉業を引きずらなければなりませんが、そこまで大きくした社長の経歴を直ぐ無にできるはずがありません。

そのために新しい社長、あるいは後継者は今後のビジョンだけではなく運営上(operation)のビジネスモデルの変更、作成、実行をしなければならないのです。

親子の仲が良かったときはお互いに話をすることができてよかったのですが、息子も30半ばにもなるとそうたやすく親の言うことをきかなくなってきています。それは息子にも自分なりにビジョンもあり未来の経営を少しは学んできている芯のある息子です、親との違いを、はい、そうですと直ぐにいうことが出来ないのです。

親のやってきた経営はもう古く「obsolete」、新しい経営にはこれまでとは異なったことをしなければならなくなっています。IT化、アジリティー・Agility (俊敏さ、機敏な適応性)とアライアンスとの関係、社員とのエンパワメントの課題等です。
また今の業界延長ではもう無くなると思っても、自分がここまで利益を多く出してきた親の事業をそう簡単には手放しにくいことと、これまでついてきてくれた役員、古株の社員に対しては何とかしてあげたいと思っているそのような情が大きく選択と決断を狂わせるのです。(M&A)別の子会社への移籍。

これらは経営力の準備度(readiness)の問題もありますし、責任と権限の委譲(empowerment)エンパワーの問題も出てきます。

社長自身はみんなの前ではまだ皆に後れを取っていないというポーズを見せて、これがリーダーだという,取るに足らない昔のリーダーシップをとっている姿を従業員に示すことで自己満足を覚えている古いリーダーなのです。ついてきてくれた人たちもそれで安心しているので、自分もそれが生きざまなのです。気持ちの問題です。

21世紀型経営とは、サーバントリーダー、オープン環境のコミュニケーション、ヒラメキと直感で未来にオリジナリティーを見つけ、差別化を図る時代です。優秀な人にはどんどんとチャンスと責任を持たせること、未来の事業にどう投資し、そのための人材をいかに教育するかです。

コーチはこれらの課題を本当に理解していますか。社長の気持ちになるような経験と別の面から見る観察眼、承継者に対する、アウトリプレイスメントの内容を持っていますか。

コーチの役目は単なるコンサルと違い非常に重みが有ります。

貴方がこのような場面に遭遇した場合はどのようにしてコーチしますか。

良く考えてみましょう。

もしよい答えがあるならば是非ともご意見を下さい。
これはほんの一部の例題として提供しています。  

杉井要一郎 / 2015年7月第4週特別投稿 © All rights Reserved by Gledis Inc.

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